概要
✔この事例は、ベルギーおよびオランダで30年以上の実績を持つ、IoT と M2M 通信/接続専門電子部品販売のMaster Chips社との協業案件です。
✔今回の課題は、シーメンス社製PLCにリモート機能を搭載する場合に高額なライセンスの取得が必要になる、ということでした。リモート機能搭載ニーズの高まりを受け、Master Chips社はこの高額ライセンス取得を回避するソリューションを開発することにしました。
✔ Master Chips社は当社テルトニカ・ネットワークス(TELTONIKA NETWORKS)の研究開発部門と共同で、当社ルーターRUT956用にカスタマイズしたPythonコードを開発。これによってエンドクライアント様にシーメンスPLCへのリモートアクセス/管理機能をご提供することが可能になりました。フル・カスタマイズ可能でかつ非常に簡単な組み込みが特徴となっております。
課題 ―シーメンスPLCのライセンス問題
テクノロジーや自動化の進歩には、「お役所仕事」がつきものといえるでしょう。例えば工場製造ラインの「進歩」はリモート監視と管理機能の実装 - つまり、製造現場のPLC(制御装置)群を24時間365日監視し、何かしらの対応が必要なときに即座に通知がいくようなシステムの搭載、ということになるでしょう。それを可能にするテクノロジーはすでに広く普及しており、かなり手頃な価格で提供されています。なぜ未だ広く普及している、とはいえない状況なのでしょうか?
その答えは、ずばり「ライセンス問題」です。PLCはシーメンス社製で、誰でも自由に機能を追加できるオープンソース製品ではありません。よって、前述のリモート機能を追加するには高額なライセンスを取得する必要があるのです。
しかしPLCに変更を加える必要のない、もっとシンプルかつ安価な方法でリモート機能を追加できるとしたらどうでしょう?外部のソリューションが、既存のシステムとPLCの間の橋渡しをしてくれることが可能だとしたら…?Master Chips社はこのような市場ニーズの高まりを受け、当社テルトニカ・ネットワークスと共同でソリューションの開発に着手しました。複雑で制限されたものを、IoT接続によってシンプルでアクセスしやすいものに変える、という挑戦がはじまったのです。
トポロジー
テルトニカRUT956のPython対応ソリューション
当社テルトニカ・ネットワークス製品の大きな特徴のひとつにパッケージマネージャがあります。当社のRUT956/4G LTEルーターで、デバイスに追加のソフトウェアインストールが可能であることを受け、こちらのルーターをMaster Chips社に採用していただく運びとなりました。当社開発のOS-「RutOS」はバージョン7.02でPythonに対応しているため、Master Chips社と当社研究開発チームが共同で、ルーターのソフトウェア用にカスタマイズされたPythonコードを開発いたしました。
RUT956をイーサネットを介してPLCに接続します。するとこのルーターがシーメンス独自のS7通信プロトコル(S7comm)を使用して、PLCとリモート機能の世界との仲介ブリッジとして機能するのです。S7commは、シーメンスのS7ファミリーのPLC間で動作し、PLCのプログラミングやデータへのアクセス/交換に使用されます。特にMaster Chips社のソリューションでは、PUT(データ送信)およびGET(データ受信)の2つのS7comm命令を利用しています。
PUT/GET通信を利用することで、PLCのアラーム監視およびアラームのトリガーに対するアクションの実行(SMSの送信など)が可能となります。このソリューションは高度なカスタマイズが可能なため、特定のニーズや産業シナリオに合わせたカスタマイズ可能なアラートを容易に設定することができます。エンドクライアント様は、どのアラームを監視しどのようなアクションを起こすか、そしてそれらのアクションをどのように実行するかを決めることができるのです。
高い信頼性と性能、そして今回のような異色なアプリケーションへの適応性があるという評価によって、当社のRUT956を選定いただくことができました。LTE Cat 4 接続が可能で、デュアル SIM フェイルオーバーにより中断なしで接続を維持できるルーターとなっております。シリアルインターフェースによって、イーサネットポートを持たない追加のレガシーデバイスをソリューションに接続できる仕様になっているのも見逃せないポイントです。
さらにRUT956にはModbus、SNMP、TR-069、NTRIP、MQTT、複数のVPNサービスなど、高度なソフトウェア機能が搭載されております。また、当社のRMS(リモート・マネジメント・システム)とも互換性があり、PLCへの簡単な遠隔アクセスや、RMS VPNによるリモートデータの読み書きが可能となっております。
つまりこのソリューションによってシーメンス製PLC関連の制約を取り払い、簡単で直接的、かつ完全にカスタマイズ可能なリモートアクセス/管理機能をご提供することが可能になったのです。RUT956は、信頼性とパフォーマンスを保証するべく設計されており、お客様にご安心いただけるソリューションをご提供することをお約束いたします。
この事例で使われた製品
RUT9564G LTE (Cat 4), 3G, 2G
オートフェイルオーバー、バックアップWANなどのスイッチングシナリオあり
イーサネット、シリアル (RS232, RS485) そして複数の I/O
位置情報サービス及び時刻同期のためのGNSS(グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム)