世界最高峰の物理学実験を可能にする車両点検モノレールとIoTソリューション

概要

✔欧州原子核研究機構（CERN）は世界最高の物理学研究機関です。宇宙の仕組みを解明するためにたゆまぬ努力を続けており、目標達成のために最先端技術の開発と実用化に取り組んでいます。

✔CERNは「大型ハドロン衝突型加速器」内の状態をリアルタイムで監視する革新的なロボット「TIM（Train Inspection Monorail：車両点検モノレール）」用の接続デバイスを探していました。

✔CERNは、「TIM」の接続デバイスに当社のRUT956セルラールーターを採用しています。RUT956のセキュリティ機能付き接続は安定しており、消費電力が低く、汎用性の高いI/Oを備えています。「TIM」のコアに追加するのに最適なデバイスといえます。

課題 - 光速の作業環境

CERNが物理学の分野で仮説を検証するために使用している「大型ハドロン衝突型加速器（以下、加速器）」は、世界で最も有名な粒子衝突型加速器です。この「加速器」は、光速にかぎりなく近いスピード（つまり非常に高速）で粒子を発射します。控えめに言っても、驚くべき実験が行われているわけです。

これらの実験をするためには、「加速器」内の酸素濃度、温度、膨大な数の過冷却電磁石やその他の構造部品が、すべて完全にそろった状態で所定の位置になければなりません。環境条件の厳密な管理が必要なことは想像に難くないでしょう。物理学は深化すればするほど、ミスは許されなくなるものです。

特殊なセンサーやカメラでこのような場所を監視することはできますが、残念ながらセンサーやカメラだけでは十分ではありません。この「加速器」は全長27km（16.7マイル）におよぶトンネル構造になっており、全体を稼働させるためには膨大な数のデバイスが必要となります。また、配線はもちろん、一つひとつのデバイスをCERNの内部ネットワークに接続できることが重要です。このネットワーク接続がなければ、研究員たちが収集したデータに直接アクセスすることができなくなってしまうからです。

幸いにも、CERNで働く明晰な頭脳たちがシンプルな方法を編み出しました。カメラやセンサーを搭載した小型の移動車両をトンネルの天井から吊り下げ、モノレールシステムを使って「加速器」内を移動させるのです。これが「Train Inspection Monorail（車両点検モノレール）」で、一部では「TIM」とも呼ばれているロボットです。

「TIM」がトンネル内を巡回し、高性能な盗聴器として重要変数を検査することで、複雑な問題を解決しています。しかし、接続性の問題を解決するためには、「TIM」に装備されたすべてのセンサーやカメラをネットワーク接続し、収集したデータをCERNの内部ネットワークに送信できるデバイスが必要でした。それがなければ、データはリアルタイム性を失ってしまいます。「光の速さ」で実験が進んでいる状況においては、リアルタイムで状況を把握することは必須なのです。

ソリューション - 接続性、そしてその先へ

接続性の問題を解決するために、CERNは「TIM」のコアに当社のRUT956 4GLTEルーターを追加し、安全で安定した4G接続を確立しました。これによって集約されたデータがCERNの内部ネットワークに送信され、研究者たちがリアルタイムでこのデータにアクセスできるようになったのです。

この名誉ある重要な役割にRUT956が選ばれた最大の理由は、このルーターが汎用性の高いI/Oを備えていることです。これにより、それぞれが独自のインターフェースを持つ多数のカメラやセンサーを接続する際の複雑さが軽減されます。様々な機能に優れていてる他のルーターは、それによって互換性のあるデバイスの幅を狭めるケースがあります。CERNはRUT956を使用することで互換性の幅を広げ、タスクに最適なデバイスを選択することができているのです。

RUT 956には、内蔵VPNなどのセキュリティ機能や、デュアルSIMフェイルオーバーなどの安定性対策が施されており、これらによって「TIM」にさらなる価値を提供しています。また、「TIM」はバッテリー駆動のため本ルーターが低消費電力であることも非常に重要です。このような危険な作業環境で、極端な温度や振動に対応できる、頑丈でコンパクト、かつ産業用に設計されたデバイスRUT956はこのプロジェクトが求めるニーズをすべて実現しているといえるでしょう。