車載ネットワークに最適な産業用ルーター/ゲートウェイの選び方
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すべてのモノがインターネットにつながるIoT時代。とくに自動車、ロボット、農業用機械などの「移動体」にコネクティビティを構築するのには、確かな技術と高機能な接続デバイスが求められます。今回は、そんな車載ネットワーク用の接続デバイス(産業用ルーター/ゲートウェイ)を選ぶ際のヒントについて深堀りしました!
移動体の代表といえば、やはり自動車でしょう。ICT機能を搭載した「コネクテッドカー」市場は年々拡大の一途をたどっています。日本の民間調査会社「富士経済」によると、2035年にコネクテッドカーの世界新車販売台数は9,480万台になると予想されています。
また日本では同年に新車販売台数のうち86.4%がコネクテッドカーになると分析されており、市場はますますこれから盛り上がりをみせることでしょう。しかしIoT化の波が来ているのは、自動車に対してだけではありません。
バスや電車などの公共交通機関、農薬散布機などの農業用機械、工場内の搬送ロボットなど様々な移動体車両のIoT化が進んでいます。また、一言で「IoT化」といってもその目的は様々です。セキュリティ強化のための場合もあれば、自動運転を可能にするための場合もあり、それぞれのケースにて求められる機能も異なってくるでしょう。
移動体の車載ネットワーク構築用のデバイスを選定するにあたって、押さえておくべき共通のポイントはあるのでしょうか?
車載ネットワーク通信の構築に必要な機能
「移動体」=「動くもの」に安定的なネットワーク通信を搭載するにあたり、接続デバイス(産業用ルーター、産業用ゲートウェイ、IoTルーター等)に必要とされる共通の機能として下記のようなものがあります。
●筐体の強度:移動体は基本的に動き回るものです。よって、車載ネットワークの構築に使用するデバイスは、振動や揺れへの耐性が強いものでなければいけません。また、移動体はさまざまな場所を走行することが想定されるため、高温から低温までの幅広い温度にさらされる可能性があります。高/低温に耐久性のあるネットワークデバイスが求められます。
●コンパクトなデバイス:移動体には様々な形や大きさのもがありますが、基本的に新しいデバイスを設置するスペースがたっぷりあるとは限りません。よって車載ネットワークの構築に使用するルーターやゲートウェイのサイズは、コンパクトで設置しやすいものを選ぶ必要があります。
●DINレール等の取付けオプション:デバイスの取付け方法に幅があることも重要です。前項にもある通り、移動体には新しいデバイスを設置するスペースがあまりないことが多いため、DINレール等でフレキシブルにデバイスの設置ができれば大変便利です。
●リモート管理システム:車載ネットワークを構築する際、対象物は動き回ることが前提なので、遠隔からリモートでの監視/管理ができることが必須条件となる場合が多いでしょう。使いやすいリモート管理システムとの互換性が重要になってきます。
●GNSS(GPS):バスや自動車、ドローンなど広範囲を移動する移動体にはGNSS(GPS)で位置確認ができることが必須でしょう。機体がどこに位置しているのかを瞬時に把握でき、見失ってしまうリスクを軽減することができます。
●デュアルSIM自動フェイルオーバー:何らかの問題でプライマリ接続ができなくなった場合に、自動でセカンダリのSIMでの通信に切り替えることができる機能です。車載ネットワークを組み込んだ移動体は広範囲を移動することが前提となりますが、さまざまな場所にいくためインターネット接続が不安定になりがちです。このデュアルSIM自動フェイルオーバー機能をもった接続デバイスを使用することで、コネクティビティの中断リスクに備えることができます。
このように「移動体」にネットワーク通信を装備するには特有かつ共通の課題があり、これらのニーズを満たすネットワークデバイスの選定が重要です。ただし車載ネットワークを構築において、それぞれの「移動体」に必要なコネクティビティは要件ごとに違ってくるでしょう。
例えば「公共バス」と「ロボット」と「農業用機械」はどれも移動体ですが、必要なネットワーク通信機器は異なります。ではそれぞれの個別のケースにどのような産業用ルーター(産業用ゲートウェイ)を使用し、最適なコネクティビティを構築できるのでしょうか?
車載ネットワークに最適な産業用接続デバイス(事例)
テルトニカ・ネットワークスでは、車載ネットワークの構築において各々のニーズを満たす、様々な産業用ルーター(産業用ゲートウェイ)をご用意しております。それぞれのデバイスを用いた事例をご紹介しましょう。
1) 工場内の無人搬送車(AGV)のケース
日本は今、「物流の2024年問題」を抱えており、倉庫内業務の自動化は喫緊(きっきん)の課題となっています。倉庫内作業の人材不足、およびヒューマンエラー解消のために、自律型のパレットAGV(商品をA地点からB地点へと移動させるために設計されたロボットシステム ― 無人搬送車)の導入が増えています。
この車載ネットワーク構築事例での課題は、下記のようなものでした。
· 遠隔監視/制御をするために、ワイヤレスM2M通信と信頼できる管理システムが必要
· 一般的な倉庫に設置されている、インターネットの電波を吸収しやすい金属棚に対する対策
この課題を解決するために、当社の産業用ルーター「RUTX10」を複数個使用することになりました。「RUTX10」に搭載されたさまざまな機能により、下記の通りこのケースにぴったりな車載ネットワーク構築を実現することができたのです。
o ギガビット・イーサネット・ルーターで高速通信が実現
o ワイヤレスのWi-Fiメッシュ機能で、倉庫内のインターネットの電波が届きづらいWi-Fiデッドゾーンを削減
o 高速ローミング機能で、最も強いネットシグナルを自らキャッチし、パレットAGVが倉庫内をランダムに移動しても安定したコネクティビティを保持
o テルトニカ・ネットワークスの「RMS(リモート・マネジメント・システム)」と互換性ありで、リモート管理/制御が可能
この自律型のパレットAGVで倉庫の自動化を実現したコネクティビティの事例についての詳細はこちらまたは、下記画像右側のトポロジをクリックしてご覧ください。
2) IoTで警護輸送車のセキュリティ向上を実現したケース
現金、宝石類、書類等の警護輸送には、安全を守るための高度なセキュリティ機能が必要です。IoTソリューションによる自動化やリモート操作等によって、警備対象品、および警備担当者のさらなる安全確保が可能になった事例をご紹介いたします。
この車載ネットワーク構築事例での課題は、下記のようなものでした。
· 警備対象品、および警備担当者のセキュリティ確保のための中断することのない安定したコネクティビティの確保
· 車載カメラ等を自動的にオンにできるような自動化ルールのためのファームウェアの柔軟性
· ハードウェアと(カメラやビデオ・レコーダー)との互換性
この課題を解決するために、当社の産業用ルーター「RUT950(*1)」を2台設置することになりました。「RUT950」に搭載された下記のような機能で、このソリューションに最適な車載ネットワークを構築することができました。
o デュアルSIM自動フェイルオーバー機能で、万が一プライマリ接続が途切れても、セカンダリ接続で中断なきコネクティビティを維持可能
o スケジュール機能により、自動で車載カメラやビデオ・レコーダーをONにすることがでセキュリティの強化が可能
o イーサネットポートが4つあり、車載カメラやビデオ・レコーダーなど複数のハードウェアとの有線接続が可能
o 当社独自のOS(RutOS)で複数のVPNサービスを利用し、監視センターへの安全なリモートアクセスを実現
IoTで警護輸送車のセキュリティ向上を実現した事例の詳細はこちらまたは、下記画像右側のトポロジをクリックしてご覧ください。(*1)「RUT950」の注文は2023年7月31日にて終了致しました。後継機として「RUT951」がございます。
3)無人で可動式農業機械の運用をするIoTソリューション
「食料のインフレ」や「少子高齢化に起因する労働力不足」に悩む日本にとって、農業の自動化は「必須」の課題です。広大な土地に無人で農薬その他を散布する可動式農業機械に、最適なIoTソリューションを導入した事例をご紹介いたします。
この車載ネットワーク構築事例での課題は、下記のようなものでした。
· 何もない広大な農耕地に安定的なコネクティビティを供給すること
· 様々な気候に耐えうる頑丈で温度耐性の高いルーターの必要性
この課題を解決するために、当社の産業用ルーター「RUT955(*2)」を設置することになりました。「RUT955」に搭載されたさまざまな機能により、下記の通りこのケースにぴったりな車載ネットワークを構築することができました。
o デュアルSIM自動フェイルオーバー機能で、万が一プライマリ接続が途切れても、セカンダリ接続で中断なきコネクティビティを維持
o GNSS(GPS)機能によって可動式農業機械の位置を正確に把握
o FOTA機能により、ワイヤレス通信で可動式農業機械に搭載したファームウェアをアップデート
o 温度耐性―40℃~75℃の頑丈な筐体で、農地におけるどんな気候条件でも安定稼働を実現
無人で可動式農業機械の運用をするIoTソリューション事例についての詳細はこちら、または下記画像右側のトポロジをクリックしてご覧ください。(*2)「RUT955」の注文は2023年7月31日にて終了致しました。後継機として「RUT956」がございます。
4)次世代の高速輸送「ハイパーループ」を実現するIoTソリューション
「ハイパーループ」は、イーロン・マスクが構想した「真空チューブ鉄道」で、最大1000㎞の速度を出せるといわれている「移動体」です。現在、様々な国で開発/実験が行われ、将来的には世界の輸送問題を大幅に解決する「次世代の交通手段」なると期待されています。
現在スイスで実施されているハイパーループ運用実験にも、当社の通信ネットワーク・デバイスが使用されています。この車載ネットワーク構築事例での課題は、下記のようなものでした。
· 信頼性が高く低遅延を実現できるゲートウェイの必要性
· 直径12cmの長さ90cmの円筒内に収まるコンパクトサイズな接続デバイスの必要性
· エネルギー消費量が少なく高温環境への耐性のあるデバイスの必要性
この課題を解決するために、当社の産業用ゲートウェイ「TRB500(*3)」を設置することになりました。「TRB500」に搭載されたさまざまな機能により、下記の通りこのケースにぴったりな車載ネットワークを構築することができたのです。
o 5G SAアーキテクチャにより、最大時速1000Kmという高速移動体にも最大1Gbpsの安定した接続を実現
o 重量はわずか241g、最大容量時の消費電力は最大6Wで、省エネルギーの車載ネットワーク構築を実現
o 100 x 30 x 93.4mmのコンパクトな筐体で、小さな円筒であるポット(磁気浮上式列車)内に設置可能
次世代の高速輸送「ハイパーループ」を実現するIoTソリューション事例についての詳細はこちら、または下記画像トポロジをクリックしてご覧ください。(*3)「TRB500」は現在日本の技適認証の手続き中です。販売開始時にはお知らせいたします。