概要
✔ 本事例で取り上げる「RedEarth」社は、オーストラリア全域の家庭や企業向けに、オン/オフグリッド対応の蓄電システム(エネルギー貯蔵システム)とバッテリーを製造・提供する現地メーカーです。
✔ 同社のシステムで遠隔管理やデータの自動収集・分析を実現するには、安定した通信環境が欠かせません。しかし、オーストラリアの農村地域では、この安定した通信手段の確保が大きな課題となっていました。
✔ テルトニカのLTEルーター「RUT241」と「RMS Connect(RMSコネクト)」を活用することで、安定した4G通信とセキュアな遠隔操作を実現することができました。
課題 ― 地方にも電力というライフラインを
オーストラリアの人口の多くは東海岸の都市部に集中していますが、農業地帯や砂漠地域を含む広大な農村部にも数百万人が暮らしています。農村部への電力供給にはある程度のインフラが必要ですが、国土面積が760万平方キロメートルを超えるオーストラリアでは、状況はより複雑です。実に国土の20%近くが砂漠地帯で占められているのです。
「RedEarth」社は、こうした農村地域の家庭や事業者、地域コミュニティに、太陽光発電を活用したクリーンエネルギーを安定供給するための蓄電システムとバッテリーを提供しています。そして現代では、これらを遠隔から監視・操作できる仕組みも不可欠です。遠隔対応が可能になれば、技術者によるトラブル対応やファームウェアの定期更新が現地に赴くことなく行えるため、サポートの質も向上します。
ただし、その実現には安定した通信手段が不可欠です。システムとクラウドサーバー間の通信が必要ですが、農村部ではその確保が容易ではありません。データの自動収集とリアルタイム分析が可能になれば、電力供給の安定性が高まり、ユーザーの電力消費の最適化や電気代削減につながります。さらには余剰電力の売電による収益化といったメリットが得られます。
こうした背景から、「RedEarth」社では遠隔機能の強化が喫緊の課題となっていました。システム自体に安定した通信機能を持たせる必要があり、そこで選ばれたのがテルトニカのソリューションです。
TOPOLOGY
ソリューション ― 「地方をつなぎ、電力を届ける」
「RedEarth」社は、自社の蓄電システムに、テルトニカの産業用LTEルーター「RUT241」を組み込むことにしました。各蓄電システムにおいて、エネルギーインバーターとカスタムデバイス「RedPi」をModbus RTUシリアル通信で接続し、その「RedPi」側に「RUT241」をイーサネットで接続します。
日中の晴天時には太陽光パネルが発電し、「RedPi」が発電量と消費量のデータを収集します。「RUT241」を通じて、これらのデータは「RedEarth」本社(ブリスベン)のクラウドサーバーに、安定したセキュアな4Gネットワーク経由で送信されます。WANフェイルオーバー機能により、万が一の通信障害時にも接続が途切れません。収集されたデータは分析され、ユーザーは専用のモバイルアプリ「EMU(Energy Monetization Unit)」を通じてその分析結果を確認できます。
遠隔アクセスを可能にしているのは、当社の「RMS(リモート・マネジメント・システム)」サービスの機能のひとつである「RMS Connect(RMSコネクト)」です。SSHプロトコルを利用し、「RedPi」や「RUT241」などのエッジデバイスに、リモートでアクセス・操作を行うことができます。これにより、パブリックIPやVPNを使わなくても、あたかも現地にいるかのような感覚で、エンジニアがリモート作業を行うことが可能になります。
また、「RUT241」は過酷な環境や温度にも耐える設計となっており、夏は50℃を超え、冬は氷点下になるオーストラリアの農村部でも安心してご利用いただけます。堅牢なアルミ筐体とプラスチックパネルを採用し、-40℃〜75℃という動作温度範囲の広さが特徴です。
「RedEarth」社がテルトニカをパートナーとして選んだのは、将来的なアップグレードや新たな展開にも柔軟に対応できる信頼性の高さに加え、オーストラリア独自の課題を理解している現地チームの存在があったからです。当社オーストラリアチームは、豊富な知識と経験をもって、「RedEarth」社の課題解決に尽力しています。